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マンガで『源氏物語』入門をしよう! ――小泉吉宏『大掴源氏物語 まろ、ん?』――HIEプレップスクール

      2016/01/06

みなさん、こんにちは! 
両国校国語科講師の福島です。
11世紀の初めに成立した『源氏物語』は、本居宣長によれば「もののあはれを知る」ために最適な書であり、日本だけでなく世界でも愛読されている大変優れた文学作品です。その影響は文学のみならず広く芸術・芸能などの文化一般に及び、人々の豊かな感性を育ててきました。
『源氏物語』は大学入試の古文で一番よく出題されます。1990年から始まった大学入試センター試験〔国語〕の古文は、教科書で取り上げられる有名な作品が出題されることはほとんどありません。しかし、『源氏物語』は本試験で1回(2014年度「夕霧」)、追試験で2回(1999年度「薄雲」、2003年度「手習」)、追試験も含めると全部で3回も出題されました。
クールジャパン(Cool Japan)という言葉があるように、日本のマンガは外国でも評価が高く、『源氏物語』を理解するために、マンガは大いに役立ちます。
『源氏物語』のマンガも多くの種類が出版されていて、BL版まであります。BLとはBoys Loveの略称で、男性同士の恋愛をテーマとしたジャンルや作品を指します。私は数か月前に古本屋で、このBL版と遭遇してびっくりしました。この中で、なんと、光源氏が愛する女性たちはすべて男性に置き換えられているのです!
たしかに、『源氏物語』はBL的な部分が少しだけあります。しかし、BL小説ではけっしてありません。BL版は古文の受験対策としては役に立ちませんので、注意しましょう。
それでは、古文の受験対策として『源氏物語』入門をするのに最適なマンガは何でしょうか?
高校の古文の先生は、必ずと言ってよいほど、大和和紀さんの『あさきゆめみし』(講談社)を推薦します。この作品は『源氏物語』を最初にマンガ化したもので、『源氏物語』の魅力を現代の一般の人にも伝える役割を果たしていて、私も大好きです。
しかし、このマンガを読む気にならない人がいることも事実です。その理由は次の三つにまとめることができます。

①巻数が多い(単行本は全13巻、文庫版は全7巻、完全版は全10巻)
②登場人物の顔の識別がつきにくい
③少女マンガが好きではない

そこで、私が推薦したいマンガは、小泉吉宏さんの『大掴源氏物語 まろ、ん?』(幻冬社、2002・2)です。この本の特長は次の五つです。

①全54帖の内容が1冊で簡潔につかめる
②登場人物の関係がわかりやすい
③絵がかわいい
④カラフルである
⑤古文常識や和歌の説明がある

表紙の栗顔の男は、もちろん光源氏です。小泉さんは栗が大好きで、1987年頃に、ある製菓会社の商品開発に携わって栗男のキャラクターが生まれましたが、それは採用されず、キャラクターの引き出しにしまわれてしまいました。しかし、『源氏物語』のマンガ化の企画が出てきた時に、この栗男が再び浮上してきました。
「まろ」は古文では自称の人称代名詞(=「私」)ですが、このマンガでは光源氏を指しています。光源氏が栗顔であるのは「まろ」とフランス語の「marron」(=栗)を掛けているからです。この掛詞を考慮に入れると、マンガの題名「まろ、ん?」は、「超イケメンの光源氏であるはずの私、ん? どうして栗顔なの?」という意味でしょうか。
マンガでは、桐壺帝の血筋の男性は栗系の顔、左大臣の血筋の男性は空豆系の顔になっています。小泉さんは、この二つの血筋を中心にして『源氏物語』の構造を明確にしたのです。「光源氏×頭中将」「夕霧×柏木」「匂宮×薫」というライバル関係が見ただけでわかります。このことに注意してマンガを読むと『源氏物語』の理解が深まります。
私は『源氏物語』の授業で系図を使って視覚的に物語全体の構造分析をします。その時に、栗系の顔と空豆系の顔との対立関係にも必ず言及します。すると、生徒たちはマンガを通して『源氏物語』の奥深さを実感してくれます。
『あさきゆめみし』が苦手な人は『大掴源氏物語 まろ、ん?』をぜひ読んでください!
『あさきゆめみし』が好きな人も『源氏物語』の理解が深まるので、ぜひ読んでください!
教科書や入試問題などに取り上げられた『源氏物語』の文章とマンガを比較してみると、新しい発見があって、楽しく勉強できますよ!

〔付記〕大学入試で古文が必要なのに、古文がよくわからず成績が伸びないという方は、ぜひHIEプレップスクールにお問い合わせください。高校2年から受験対策を立てると大変効果的ですよ!

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