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AO・推薦入試に必要な思考とは?    ――桑田真澄/平田竹男『新・野球を学問する』―― 両国・柏の個別指導学習塾HIEプレップスクール

      2016/01/06

みなさん、こんにちは!
両国校国語科講師の福島です。
2016年度は東京大学で推薦入試、京都大学で特色入試が初めて導入されることになり、AO・推薦入試を実施する国公立大学が過去最多となりました。
これは、偏差値至上主義的な教育の弊害から脱し、主体性のある多様な学生を獲得することで教育を活性化したいと考える国公立大学が増えてきたことを示しています。

AO・推薦入試を受けようかどうか迷っている人は、次の質問に答えてください。

質問 あなたは大学で学びたいことが具体的に決まっていますか?
① 決まっている  ② 決まっていない

①を選んだ人はAO・推薦入試に向いています。大学側にアピールできる実績があると、さらによいでしょう。
②を選んだ人は一般入試に向いています。AO・推薦入試を受けたいと思うのであれば、今から自己分析をして学ぶ意欲を引き出し、大学側にアピールできる実績を上げる努力をする必要があります。
AO・推薦入試では、志望理由書や自己推薦書などの書類を提出し、小論文や面接などの選考を受けます。その対策に悩んでいる人も多いでしょう。
一般入試は問題速答型の思考が中心となります。しかし、AO・推薦入試は学ぶ意欲を主体的に大学側に伝える必要があるので、この思考だけでは対応できません。
さて、AO・推薦入試に必要な思考とは何でしょうか?
それは問題発見解決型の思考です。
AO・推薦入試は、この点が一般入試と決定的に違います。AO・推薦入試では、たとえば東日本大震災や原発事故、最近では豪雨災害などの社会的な出来事を取り上げ、その問題点を主体的に発見して考察することができます。しかし、一般入試では、それができません。
AO・推薦入試は、受験者自身の問題発見解決型の思考を活性化し、それを志望大学とつなげていって自分の人間性を主体的にアピールすることが大切です。
この思考は主に小論文を書くことで養うことができます。小論文は常識を疑って問題を発見し、それに対する意見を表明して、その論拠を説明するものであるからです。
しかし、小論文を書く習慣がない人は問題発見解決型の思考がなかなかできません。
そこで、この思考が大学とつながる過程が具体的にイメージできて小論文が書きたくなる良い本をご紹介します。
それは桑田真澄/平田竹男『新・野球を学問する』(新潮文庫、2013・2)です。
これは単行本『野球を学問する』(新潮社、2010・3)の内容に「第2部 野球界の試練」が増補され文庫化された本です。この本には、スポーツ関係の学部だけでなく他の学部の受験者にも役立つ考え方があります。
私は2010年4月に『野球を学問する』の第4章「根性野球のルーツ」を読んでいて、思わず叫び、涙が出てきました。
「えっ! あの桑田さんが、便器の水を飲んでいたんだ!」
桑田真澄さんはPL学園の高校1年生から甲子園で活躍し、エースとして5大会に連続出場しました。優勝が2回、準優勝が2回、ベスト4が1回でした。甲子園通算20勝は戦後1位、6本塁打は2位という記録保持者です。1986年、読売ジャイアンツにドラフト1位指名で入団して以来、長らくエースとして活躍し、通算173勝しました。2006年にジャイアンツを退団し、アメリカMLBピッツバーグ・パイレーツへ移籍しました。2007年6月にメジャーデビューし、2008年3月に現役引退しました。
このように輝かしい実績と経歴を持つ桑田さんは、PL学園の高校1年の5~7月頃に、トイレの便器の水や雨の水溜りの上澄み部分を飲んでいました。当時は「水を飲んだらバテる」「根性がつかない」と言われていた時代で、スポーツ選手が練習中に水を飲むことは禁止されていました。しかし、暑い時は発汗量が多くなるので、どうしても水が飲みたくなります。「トイレに行ってきます」と言って水を飲もうとしますが、トイレの蛇口は水が出ないように針金で縛られていました。そこで、仕方なく便器や水溜りの水を飲んでいたのです。
苛酷な経験はこれだけではありません。桑田さんは小学校3年でソフトボールチームに入った時から、監督・コーチ・先輩に暴力や体罰を受けていました。そこを辞めて硬式野球のクラブチームに入っても、中学の準硬式の野球部に入っても、それは避けられませんでした。中学2年から暴力や体罰を受けることがなくなりましたが、他の選手はそれを受けていました。
桑田さんは野球を非常に愛しています。ただし、暴力や体罰や非効率的非合理的な練習をきっぱり否定しています。小学生の時は、このような野球界のマイナス面に疑いを持っていませんでしたが、中学生になってから「野球界がおかしい」と思いはじめ、高校生になってから「野球界を変えたい」と考えるようになりました。野球界の悪しき伝統の被害はありましたが、それに染まらず、加害者にはならずに、それを改革しようと思い続けました。
桑田さんは中学の時に、①PL学園で甲子園優勝、②早稲田大学入学、③読売ジャイアンツのエースになる、という三つの目標を立てました。この中で②だけは実現することができませんでした。しかし、この夢を叶える時が野球選手を現役引退した後に来ました。
1995年に肘の手術をした時に、早稲田大学野球部の監督で野球記者であった飛田穂洲の「野球道」の本を読むようになり、野球人生に深みが出てきました。2008年3月に現役引退した後、12月に大卒認定の資格を得て、翌年の4月、野球界の悪しき伝統を変えるために、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の修士課程1年制コーストップマネジメントコースに入りました。高卒でしたが、学ぶ意欲も主体性も実績も十分過ぎるほどあったので社会人AO入試に合格できたのです。
桑田さんが選んだコースは、トップスポーツ界で要請される人材を育成するために、実務経験を有する者に対して実務的・専門的能力を養成するコースです。大学院では「逆台形モデル」を提唱している平田竹男教授のゼミで学び、「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」というテーマで修士論文を書きました。これは、「自らがさんざん苦しんできた野球界の持つ体罰、後輩いじめ、長時間練習、そして絶対服従という悪しき伝統の根源を、その由来から探り、突きつめていったもの」(平田竹男「おわりに」)で、「練習量の重視/精神の鍛練/絶対服従」の「野球道」から「練習の質の重視『サイエンス』/心の調和『バランス』/尊重『リスペクト』」の「スポーツマンシップ」(=新たな「野球道」)へ転換する必要性を説いたものです。つまり、自分の経験から野球界の悪しき伝統という問題を発見し、その原因や背景を分析して、その解決策について考察したものです。この論文は社会人1年制コースの最優秀論文賞と濱野賞(日本スポーツ産業学会からの表彰)を受賞し、桑田さんは2010年3月に総代首席で修了しました。
大隈重信が創立した早稲田大学の建学の精神は、「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」です。常識を疑い、学問を活用して社会問題の解決を図ろうとする桑田さんは、この精神に最もふさわしい人です。2013年1月から東京大学の硬式野球部で特別コーチを務め、2014年4月から東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系の大学院研究生となり、投手や野手の動作に関する研究を始めました。機会がありましたら、ぜひお会いして教育改革についてのお話を聞かせていただきたいです。
桑田さんは修士論文を基に新たな「野球道」を通じて野球界を改革していこうと尽力していて、論文が社会変革のツールであることを私たちに教えてくれています。『桑田真澄の常識を疑え! KUWATA METHOD―父と子に贈る9つの新・提言!』(主婦の友社、2015・3)は修士論文の実践版で、常識を疑うことの大切さをわかりやすく説いています。
小論文も社会をよい方向へ変革していくためのツールです。これを通して、常識を疑い、問題を発見し、その原因や背景を分析し、それを解決するにはどうしたらよいか考え、自分の意見を表明し、その論拠を論理的に説明することができます。
みなさんも『新・野球を学問する』を参考にして問題発見解決型の思考を身につけて小論文を書き、人間性を高め、AO・推薦入試に合格して社会変革を志してくださいね!

〔付記〕AO・推薦入試の対策は一朝一夕にできるものではありません。なるべく早い時期にスタートし、問題意識を持ってしっかりと準備する必要があります。AO・推薦入試について不明な点がございましたら、ぜひHIEプレップスクールにお問い合わせください!

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