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慶應義塾大学グローバルセキリュティ研究所とは? ――「G‐SEC OPEN DAY 2015〈研究所公開〉」――

      2016/04/19

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みなさん、こんにちは!
両国校国語科講師の福島です。
慶應義塾大学は1990年にSFCを設立して日本で最初にAO入試を始めました。それ以降、私立大学だけでなく国公立大学もAO入試を取り入れつつあります。2016年度から東京大学は推薦入試、京都大学は特色入試を始めました。早稲田大学は2016年度入試から段階的にAO・推薦入試の割合を現行の4割から6割にまで引き上げる予定です。
このように大学改革は慶應義塾大学をはじめとして徐々に進みつつあります。2020年には高大接続システム改革の一環として、大学入試センター試験だけでなく「一般入試、推薦入試、AO入試」という区分も廃止され、新しい入試制度が本格的に始まります。大学入試全体は学力を担保しつつ選抜に時間をかける一種の「AO入試」になっていくことでしょう。このことを考えると、今後の大学改革の主要なモデルは、世界に向けて先駆的な大学の姿を提示している慶應義塾大学であると言えます。
そこで、今回は慶應義塾大学グローバルセキリュティ研究所(G‐SEC, Global Security Research Institute)についてご紹介します。

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G‐SECは、それぞれの学部でなく慶應義塾に直属していて、学内外の他の機関と有機的に連携して先端的学術研究を推進することを目的とし、現代社会が直面する諸課題の中から、今日的課題として研究が望まれる問題を学術研究の対象とする研究所、つまり慶應義塾大学と社会との結節点としての役割を担う重要な研究所で、2004年6月に設立されました。所長は慶應義塾大学総合政策学部教授の竹中平蔵氏です。
科学技術とイノベーション、エネルギー・環境問題、安全保障、ヒューマンセキュリティなど、地球規模の問題から個人の生活レベルにも影響を及ぼす現代の諸問題に幅広く取り組み、これらに関わる政策について研究しています。
2007年度からWatch & Warningセミナーを実施すると同時に、数多くの研究プロジェクトを進め、2009年度から寄附講座を新たに開設し、研究・教育の充実を図っています。学内外のリソースを結びつけて社会に対して知的な貢献をすることで、イノベーションを実現する役割を担っています。研究所の活動や成果については、『G‐SECニューズレター』で報告しています。セミナーやシンポジウムには誰でも参加できます。
私は、昨年(2015年)の12月12日(土)13:00~16:00に慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G‐SEC Labで開催された「G‐SEC OPEN DAY 2015〈研究所公開〉」に参加し、G‐SECの活動に触れることができました。参加者は約30名で、ほとんどが大学生・院生や社会人でした。高校生は約2名来ていました。
竹中平蔵氏の開会挨拶の後、講演(G‐01)、対談(G‐02)、研究活動紹介(G‐03~11)がありました。プログラムは次のとおりです。

[講演]
G‐01「日本でリーダーシップ教育は可能か?―慶應G‐SECにおけるリーダーシップ教育の挑戦―」(田村次朗:副所長、法学部教授)
[対談]
G‐02「グローバル化におけるアートの役割」(南條史生:森美術館館長、竹中平蔵:所長、総合政策学部教授)
[研究活動紹介]
G‐03「バブル後25年の検証」(竹中平蔵:所長、総合政策学部教授)
G‐04「リーダーシップと交渉学に関する研究―「復興リーダー会議」―」(田村次朗:副所長、法学部教授)
G‐05「地域体験資源を活用したサービスデザイン―地方創生へのアプローチ―」(武山政直:副所長、経済学部教授)
G‐06「意味転換によるサービスイノベーション手法の開発」(武山政直:副所長、経済学部教授)
G‐07「ご近所イノベーション学校の取り組み」(武山政直:副所長、経済学部教授)
G‐08「顧みられない熱病(NTDs)に関する拠点形成」(青木節子:副所長、総合政策学部教授)
G‐09「バイオセキュリティの国際連携体制強化に関する研究調査」(青木節子:副所長、総合政策学部教授)
G‐10「サイバーセキュリティに関する多軸的研究調査」(土屋大洋:上席研究員、政策・メディア研究科教授)
G‐11「2015インターネットガバナンスプログラム報告」(國領二郎:上席研究員、総合政策学部教授)

G‐01は田村次朗氏の講演で、テーマは「日本でリーダーシップ教育は可能か?―慶應G‐SECにおけるリーダーシップ教育の挑戦―」です。田村氏はリーダーシップと交渉学に関する研究に取り組んでいます。
現在の日本にはリーダーシップの教育プログラムが存在していません。これまでの日本の教育は決まった正解のある問題ばかり扱っていました。しかし、複雑化する社会では決まった正解のない問題を扱わなければなりません。そこで、慶應義塾大学ではハーバード大学の教育を参考にして、2016年度から「リーダーシップ基礎」というプログラムを実施することになりました。リーダーシップとは、問題を解決する方向に人々を導くための活動、プロセスです。これからは特定の人ではなく誰もがリーダーシップを発揮できるようにすることが必要です。このことが日本再生の最重要課題であることが分かりました。
G‐02は南條史生氏と竹中平蔵氏との対談で、テーマは「グローバル化におけるアートの役割」です。
寄附講座「アートと社会」は2010~2014年度まで開講しました。この講座のねらいは、受講者がアートを親しむことを通し、アートを社会全体で支えねばならないことを実感してもらい、さらに、アートの持つ社会的な側面について多角的に議論を深め、アート豊かな人生を持つために各自が何をすべきかを考えていくことです。この講座の成果を踏まえ、グローバル化する社会でのアートの役割について考えていきました。
竹中氏は、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェの次の言葉を引用しました。
《芸術…芸術こそ至上である。それは生きることを可能ならしめる偉大なもの、生への偉大な誘惑者、生への大きな刺激である。》(『権力の意志』)
そして、ハードパワー(軍事力・経済力)に対するソフトパワー(文化力)の重要性について言及しました。さらに、日本の芸術界には利権化による排除の構造があること、現代芸術には組織化されていないので支援が必要であることを指摘しました。南條氏は、「アートは人々に現実を見る力を与える」ということを、パブリックアートのスライドを使い、具体的に示しました。
私は質疑応答の時に「私はアール・ブリュットやポコラートに関心があります。福祉とアートとのつながりについてのお二方のお考えをぜひ伺いたいです」という質問をしました。すると、南條氏は、絵画や彫刻だけでなく音楽も福祉とつながってきていて、障害者の生の力を実感できる場が増えてきていることを教えてくださいました。竹中氏は「福祉とアートの結びつきは社会変革にもつながっていくことでしょう」と答えてくださいました。
研究活動紹介はG‐05とG‐10が特に印象的でした。
G‐05は武山政直氏の研究活動紹介で、テーマは「地域体験資源を活用したサービスデザイン―地方創生へのアプローチ―」です。
武山氏は有形・無形の資源の組み合わせを通じて新たな価値共創機会を生み出すサービスデザインの手法を用いて、体験価値を基軸とした地域振興の方法論を研究しています。特に、地域の各種の潜在資源を体験価値化の観点から評価し、それらを新たな発想で統合することで、域内外の交流を目的としたサービス創出のための手法開発を試みています。観光での物質資源から体験資源への転換について、スライドで具体的に示しました。私はカードを使ってストーリーを組み立てる試みに興味を持ちました。
G‐10は土屋大洋氏の研究活動紹介で、テーマは「サイバーセキュリティに関する多軸的研究調査」です。
今後、あらゆる機器がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)時代を迎えることになり、サイバー空間におけるセキュリティ問題は社会の秩序維持において重要な課題であること、サイバー兵器と通常の兵器を組み合わせることで軍事的な危険が増すことを知ることができました。
以上のように、G‐SECは大学のタコ壺的な研究から脱し、急激な国際情勢の変化に適応した横断的プロジェクトに力を入れています。このことは慶應義塾大学や日本だけでなく、世界にも資することになるでしょう。
私は「G‐SEC OPEN DAY 2015〈研究所公開〉」の参加によって多くのことを学びました。この体験を今後の教育に活かしていきます。


 

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