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【HIEプレップスクール】朝日新聞スポーツシンポジウムに参加してきました! ――「スポーツと熱中症」―― 

      2016/08/22

写真B・熱中症

みなさん、こんにちは!
両国校国語科講師の福島です。
夏のスポーツは熱中症に注意する必要があります。
熱中症は高温多湿の環境に長時間いることで体温調節が難しくなり、体のだるさや吐き気、手足のしびれなどを引き起こします。症状が深刻な場合、命に関わることもあります。
したがって、夏のスポーツの楽しさを伝えつつ、選手や観客がより健康に、より安全にスポーツを楽しむことができる環境づくりが必要です。
2020年の東京オリンピック(7月24日~8月9日)は暑い盛りの中で開催されますし、パラリンピック(8月25日~9月6日)も厳しい残暑の中での開催となるでしょう。
現在、選手と観客を熱中症から守るために、競技会場やマラソンコースを中心に様々な暑さ対策が検討されています。
そこで、私は朝日新聞スポーツシンポジウム「スポーツと熱中症~選手と観客が、安全にスポーツを楽しむために~」に参加してきました。
写真C・熱中症

このシンポジウムは2016年5月8日(日)の13:30から15:30までイイノホール(東京都千代田区内幸町2・1・1 飯野ビルディング4F)で開催され、講演(①・②)と討論(③)が行われ、参加者は約500人でした。プログラムは次のとおりです。

13:30~13:20
主催者挨拶…………福地献一(朝日新聞社執行委員、オリンピック・パラリンピックスポーツ戦略担当)
13:40~14:00
①基調講演1「夏のスポーツと熱中症」…………横倉義武(公益社団法人日本医師会会長)
14:00~14:20
②基調講演2「高校野球の取り組み」…………八田英二(公益社団法人日本高等学校野球連盟会長)
14:20~14:30
休憩
14:30~15:30
③討論(パネルディスカッション)「選手と観客が安全にスポーツを楽しむために」
…………コーディネーター:安藤嘉浩(朝日新聞編集委員)、
パネリスト:三宅康史(昭和大学医学部救急医学教授、昭和大学病院救命救急センター長)、
渡辺元智(横浜高校野球部前監督)、
荒木大輔(野球解説者)、
鯉川なつえ(順天堂大学陸上競技部女子監督、准教授)
写真D・熱中症

①の講演のテーマは「夏のスポーツと熱中症」でした。
熱中症は6~8月、特に7月下旬~8月上旬に多く発生します。いつでもどこでも誰でもかかる可能性があり、子どもや中高年の人は特に注意する必要があります。湿度が高ければ温度が高くなくてもかかる可能性があります。
対策として、暑さを避ける、水分補給をする、急に暑くなる日に注意する、個人の特徴を考慮に入れる、集団活動の場で配慮する、などが大切です。
スポーツ中の突然死を防ぐためには心肺蘇生法の普及・啓発が必要です。
オリンピック・パラリンピックでは、熱中症予防、集団災害対策、外人の急病時の対策をこころがけるべきです。
②の講演のテーマは「高校野球の取り組み」でした。
熱中症の新聞記事は、1993年は数本でしたが、1997年に増え始め、2001年は100本、2007年は300本、2010年は500~700本と増え、温暖化の影響もあって、現在、熱中症は社会問題になってきました。熱中症にかかりやすいスポーツは順に、野球、ラグビー、柔道、サッカー、剣道、山岳、陸上などです。
夏の全国高等学校野球選手権大会での熱中症対策は、ユニホームの素材開発、水分補給の促進(場内アナウンス、飲み忘れ防止、理学療法士によるサポート、審判員への配慮)、ベンチの環境改善(庇とクーラーの設置)などがあります。
「練習中に水分補給はどのようにしていますか」という質問に対して「練習の合間や休憩時間はいつでも自由に飲ませている」と回答した野球監督の数は、1998年は74.7%、2003年は88.0%、2008年は94.0%、2013年は96.2%です。水分補給を重視する監督がだんだん増えていることが分かります。
③の討論のテーマは「選手と観客が安全にスポーツを楽しむために」でした。
渡辺元智(もとのり)氏は横浜高校野球部前監督で、指導者生活50年の中で5回の全国優勝を経験し、愛甲猛、松坂大輔ら多くのプロ選手を輩出しました。
荒木大輔氏は早稲田実業で甲子園に春夏5季連続出場し、1982年のドラフトでヤクルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)に入団して活躍し、現在は野球解説者をしています。1980年夏の甲子園大会では初戦の北陽戦を含めた5試合に先発し4完封、44回1/3連続無失点で決勝進出の大きな原動力となりました。しかし、決勝では渡辺監督の横浜に初回先制されて無失点記録が止まり、連投による疲れのせいか、その後も小刻みに追加点を許し、早実は4対6で準優勝に終わりました。
渡辺氏と荒木氏によると、1980年代くらいまでは根性野球で「水を飲むな!」という指導が当たり前だったそうです。
監督時代の渡辺氏は選手が熱中症で一命を取りとめたことがきっかけとなって水分補給を重視し、マネージャーなどに選手の体調を管理させるようにしました。中学高校時代の荒木氏は先輩の誘いによって水を飲むことができたらしいです。
鯉川なつえ氏は順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授、同大学女性スポーツ研究センター副センター長を務めています。1995年9月3日にユニバーシアード・福岡大会のマラソン日本代表として出場しました。しかし、熱中症によってゴール直前の39メートル地点で倒れ、優勝を逃してしまいました。9月4日付の「朝日新聞」には「湿度91%「金」目前倒れた」、雑誌「アエラ」(9月16日)には「夏マラソンに新たな教訓」という記事が掲載されました。
鯉川氏はこの経験を忘れず、選手の健康を大切にするための研究を行っています。アメリカではトレーニング後にICE Bathに入ることが主流であること、ブルーのサングラスは体温を下げる効果があること、野口みずき氏がナンバーカードに穴を開けて体温を下げていたことなどを教えてくれました。
三宅康史氏は医師としての立場から熱中症について分かりやすく説明してくれました。
熱射病や日射病などと呼ばれていた病気は2000年から熱中症という言葉に統一され、軽いほうからⅠ度(軽症:応急処置と見守り)、Ⅱ度(中等症:医療機関へ)、Ⅲ度(重症:入院加療)と3段階に分けられました。
37℃以下で一番うまく働く脳を含めた重要臓器は、体温が高くなることで機能しにくくなります。また、汗をかくと体の血液が減って血のめぐりが悪くなります。これらのことによって体の調子が悪くなり、熱中症を引き起こします。
熱中症の症状は、めまいや顔のほてり、筋肉痛や筋肉の痙攣(けいれん)、体のだるさや吐き気、汗のかきかたの異常、高い体温や皮膚の異常、反応や歩行の異常、水分補給の不能状態です。
熱中症の治療としては、応急処置としての「FIRE」(Fluid:水分と塩分の補給、Icing:身体冷却、Rest:安静、Emergency:「緊急事態」の認識・119番通報)を認識しておくことが重要です。
医療機関では急速輸液や急速冷却が治療の主体となります。
意識障害や肝機能・腎機能障害、凝固異常を認める場合には、速やかな高度医療機関への搬送が必要です。
子どもは体温調節機能が十分に発達していないし、大人よりも水分が少ないため、熱の影響を受けて先に体温が上がります。汗をかく能力が低く、腎臓の働きも弱いので尿も作りにくいです。暑さを感じても、自分では水を飲んだり、服を脱いだりといった判断が難しいです。高齢者は暑さに気づきにくく、体内の水分が不足しがちで、汗をかく能力も衰えています。
したがって、子どもや高齢者は熱中症になりやすいので注意しましょう。
以上が討論の主な内容でした。
熱中症対策について次にまとめておきます。
第一は暑さに負けない体づくりをすることです。水分・塩分補給(のどが渇く前や暑い所に出る前に補給するのがベスト、塩分は水分を体内に保持する作用もあるので梅干や塩飴などを一緒にとると効果的)、睡眠環境の整備、バランスのよい食事を心がけましょう。日ごろから運動によって汗をかく習慣を身につけておくと暑熱順化(暑さに慣れて強くなること)につながります。アルコールは尿の量を増やすため、厳禁です。二日酔いで脱水症状がある時や、食事抜きで厚い環境に出ることは、絶対に避けましょう。また、熱のある方、乳幼児、高齢者、肥満の方なども体温をうまく調整できないため、暑い時は無理をしないでください。
第二は日常生活の中で暑さに対する工夫をすることです。気温・湿度の注意、涼しい環境づくり(窓を開ける、扇風機やエアコンを使う、ブラインドや朝の打ち水をする、すだれやカーテンで日差しを遮る)、衣服の工夫(吸湿性・速乾性に優れた服を着る、襟元を緩める、黒色系の素材を避ける)、日差しの忌避(日陰を歩く、日傘や帽子を使う、保冷グッズ(額や首まわりを冷やす)の携帯を心がけましょう。
第三は特に気温や湿度の高い状況では暑さから身を守る行動をすることです。飲み物の携帯、適度の休憩、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)の活用を心がけましょう。熱中症のなりやすさは、温度と湿度、風速、輻射熱の関係で決まります。その指標となるのが暑さ指数です。環境省熱中症予防情報では、当日と翌日の暑さ指数の予測値を提供しています。
以上のように、熱中症は正しい知識を持ち正しく行動すれば予防することができます。熱中症対策を万全にしてスポーツを楽しみましょう!

 


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